{book]ドナルド・E・ ウェストレイク「斧」
- 作者: ドナルド・E.ウェストレイク,Donald E. Westlake,木村二郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/03/01
- メディア: 文庫
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ドートマンダーのシリーズでは意外な展開が連続して読者を楽しませてきましたが、この小説には意外と言えることはほとんど起こりません。淡々と物事は進んでいきます。しかし、そんな地味な展開でもまったく飽きることなく読み進められるのはさすがとしか言いようがありません。まさしくプロの仕事ですね。
前述したように意外なことはあまり起こらず、後半も「あれ、もっとエスカレートしていかないの?」とか思いましたが、この静かさの恐ろしさは読了後に湧き上がってきます。
連続殺人を主人公は極めて冷静に計画を立て、熟慮した上で行動し、ときに予想外の出来事で狼狽したり、殺す相手の人格を想い犯行を激しく悔やんだりすらします。つまり、いたって正常なのです。
正常な人間が計画的連続殺人ができてしまうかもしれないという事。その事実を確認する事の恐怖。実に怖い小説でした。