川上弘美「蛇を踏む」
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1999/08/10
- メディア: 文庫
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正直言って、川上弘美はよくわからない。これまで5、6冊ほど読んできてもちょっとずつ分かってくるどころか、どんどん分からなくなってきます。でも、それが面白いのだろうなあ。常にどこか得体の知れないような感覚があることが。
今作は特に超自然的な要素が多くて、表題作にしても蛇を踏んだら母になって家に住み始める、という突拍子も無い話です。シュールですね。主人公の名前がヒワ子さんというのもなんだかよく分からないセンスです。致命的な出来事は何の前触れも無くやってくる。とてもこわい話でもあります。
「消える」は家族が消えたり縮んだりする話。「俺の愛は団地でいちばん大きな家の面積より広い」は歴史に残る名言であります。
「惜夜記」は奇妙な夜の話。冒険ファンタジーとしても読めるので実はいちばん分かりやすいかも。現実的なものに異質なものが混じるよりもみんな変な方が逆に親しみやすいということでしょうか。
時折グッとくる文章があって病み付きです。この人の異質さはセンスのままに書くために世界観を無理矢理文章に合わせている事からも生じているのかな。多分。
あと、全部の話にグロテスクな描写があるのですが、それらがそこはかとなくエロティックなのが気になります。ぼくのエロ感覚が異常なのか。
あとがきで読んでやっと川上弘美の小説が少し理解できたかもしれません。