秋月涼介「迷宮学事件」

迷宮学事件 (講談社ノベルス)

　おお、ちゃんと本格ミステリしてる。しかも結構良く出来てる。どうしたんだ、秋月涼介！*1
　秋月涼介らしいキャラの作り方で堅実なミステリをやっているので、なるほど、これは確かに広く支持されるよなあ、と納得。
　……でもぼくは「月長石の魔犬」のあの微妙な感じが好きだったのですよー。あの悪いバランスとかが好きだったのですよ。ぼくは秋月涼介に「堅実な」面白さを求めてはいないので、意欲はあるけどやや空回り、しかも照れ隠しっぽくひねくれてる「月長石」に魅力を感じたのです。
　でも、今作にも妹の過去を必要以上に語っている、などのバランスの悪さは見られるので安心したりするのですが。
　これから「月長石」の微妙さと本書の真っ当な面白さを同居させた作品を書いてくれるのではないか、と密かにわくわくしております。とりあえず「紅玉の火蜥蜴」も早めに読んでみたいところです。
　
　実は今作が致命的にきつかったのは霞美さんを徹頭徹尾好きになれなかったことでした。理由は自分でも不明。

*1:失礼です