中村航「あなたがここにいて欲しい」

あなたがここにいて欲しい

　相変わらずの中村航センスは健在です。ファンシーかつメルヘン、しかしロックでロマンティストな感じでしょうか（なおかつ、意外と小説としては上手かったりします）。本書はそのセンスが前面に出ているので、ファンは間違いなく楽しめると思いますが、最初に読むには癖が強くて適していないかもしれません。
　個々の作品の感想を。
　まずは表題作「あなたがここにいて欲しい」。わりにダメ人間な主人公がポジティブな恋に挑むお話。やはり中村航は変な人だなあ、と思った次第です。
　長編「夏休み」のキャラクターだったことに他の方の感想を読んで初めて気付いたぼくは鈍すぎると思いました。読んだ本のことは片っ端から忘れる方です。
「男子五編」はある男子の小学生時代から今までを追ったもの。ちょっと駆け足すぎていまひとつかなあ。もしかしたら私小説なのかもしれません。
　ラストの「ハミングライフ」はアンソロジーで読んでいたので再読。いや、これはいいですよ。心温まる、へんてこ話。手紙のやりとりがシュールすぎるけど、それがいいです。漲る変パワー。素敵です。