hirayama46の日記

とりとめもなく書いています。

村上春樹「東京奇譚集」

東京奇譚集

東京奇譚集

 小粒ながらも村上春樹のセンスはきちんと味わえる短編集でした。過剰な期待をせずに落ち着いて読むと良いのではないでしょうか。ファンにはお薦め。「やれやれ」「悪くない(中略)ぜんぜん悪くない」もちゃんとありますし。
 
「偶然の旅人」村上春樹が実際に体験したかのような形式で書かれている短編。「回転木馬のデッド・ヒート」を想起させる設定ですね。前向きなラストが好み。
「ハナレイ・ベイ」鮫に咬まれて溺れ死んでしまったサーファーの母親の話。主人公のサチさんがナチュラルに暴言を吐くのに笑った。「言っとくけど、あんたのろくでもない母親といっしょにされたきないわね」とか。そんな、会った事も無い人に対して。
「どこであれそれが見つかりそうな場所で」幼女とお話するシーンが見所。オールドファッションは知ってるけど、うさぎホイップとほかほかフルムーンは知らないなあ。実在するのだろうか。少なくとも読んだ人の十分の一位の人は実際にミスタードーナッツに行くはずだ。
「日々移動する腎臓のかたちをした石」このタイトルは大好きだなあ。内容も悪くないです。
品川猿」これも良いタイトル。最も現実離れした話で、それだけにその部分の比喩的な意味が気になる。そういうの読み解くの苦手なんだけど。うーん、「地下」に住む「猿」がああいう存在だった事が興味深いなあ。そう考えるとこの短編集って全体的に昔よりも前向きだよな、とか思った。