アンソロジー「LOVE or LIKE」

LOVE or LIKE

　個人的には「百瀬、こっちを向いて」はあまりピンとこなかったのですが、今回の「なみうちぎわ」は文句なしに素晴らしかったです。最高傑作級です。これを読むためだけにでもこの本を手に取る価値は大ありです。むしろお釣りがきます。本当に。中田永一さんは「せつなさの達人」と呼ばれてもいいと思います。
　それ以外の作品も手短に。
　石田衣良「リアルラブ？」えーと、箸休めっぽい作品なのですが、何故にこれが巻頭なのでしょうか。作品以前に構成が間違っているような。石田衣良を一番前にするという戦略なのでしょうが。
　中村航「ハミングライフ」ぼくは中村航の作風に抵抗感のない人なのでとても楽しめました。中村航は男性ですが乙女回路を搭載しているのだと思います。多分ぼくにもあります。
　本多孝好「DEAR」これも良かったです。卒の無い出来でした。
　真伏修三「わかれ道」これはダメだ……。物語が平凡すぎるうえにセンスが厳しい。頭の固い中年が若い人向けに書こうとして失敗した作品かも。
　山本幸久「ネコ・ノ・デコ」悪くは無かったけど分量が不足していたような。これをストレートな恋愛小説だと思ったぼくは頭がおかしいのだろうか？　などとネットの感想を読んで思いました。