hirayama46の日記

とりとめもなく書いています。

恒川光太郎「秋の牢獄」

秋の牢獄

秋の牢獄

 恒川光太郎ははずれがないなあ……。この本も実に面白かったです。収録されている3つの短編どれも良かったです。まだ3冊目なのにこの技術とセンスはなかなか無いと思います。本当にこれからが楽しみな作家さんであります。
 個人的なお気に入りは表題作の「秋の牢獄」。同じ1日を繰り返す、というどちらかというと手垢の付いたテーマですが、簡潔ながらもそっけなくない文章と丁寧な展開でぐいぐい読ませます。希望と少しの不安が一体になったラストの余韻が素敵でした。
 2作目の「神家没落」は恒川光太郎らしい和風幻想+奇想+複雑な余韻が味わえます。
 ラストの「幻は夜に成長する」はかなりホラー色の濃い短編。珍しい直球の「厭話」で非常に興味深いものでした。設定の転がし方がたいへん好きです。